約束の場所に向かうStoriesメンバー、なんだかそろって浮き立っている。ああ、若い子たちとおしゃべりができるからだな……。
今回のRUN伴熊本は、なんと実行委員が全員大学生! 特に熊本市(中央区)を担当したのは華の女子大生たち。熊本大学の看護学生である彼女たちは、大学内のサークル「Orenge Project」のメンバーで、その活動の中でこのRUN伴をつくりあげたのです。
そんな実行委員の4人に集まってもらいました。大学生を相手にするのは初めてだぞ……さあ、どうなることやら、恒例のワークショップのはじまりはじまり。

現役・女子大生のパワー!

浮き立っているとはいえ、すこしキンチョーもしていて。若いひとたちに向けて、一体どんなことを聞けばいいのか、迷ってもいました。

今回は問いが3つあることを先に伝えておこう。
「熊本市の好きな○○」
「看護師を目指す理由」
「RUN伴くまもと、どうだった?」

基本的にいつもの質問と大きく違ってはいないはず。さあ、どうでる……?

「熊本の好きなところか〜」と彼女たちが考え出した答え。

くまモン

ネコが多い

友だちとの待ち合わせ場所の「ココサ」・「パルコ」

熊本の若者で知らないひとはいない、繁華街にあるショッピングモールのこと。ちなみに、高校生の待ち合わせは「パルコ」で、大学生は「ココサ」なんだとか。
※パルコは2020年2月に閉店。

うんうん、いいぞ! なんだか女子大生っぽいアンサー……!
こちらのキンチョーどこ吹く風。大学生の普段のおしゃべりにすっかりなごませてもらいました。
この調子で次行きましょう!

地域のために?

みんな同じ看護学科で学年が違う4人。看護師を志す理由を考えてもらうと、

「人手が足りていない業種だから」
「困っている人を直接助けることができるから」
とか
「地域のためになにかしたい」というまっすぐな答えがずらり。

地域のために、と答えてくれた瀬口瑞彩さん。自身は小児喘息を患った過去があって、小さい頃から病院に通っていたそうです。そのときに出会った看護師のしごとに憧れを持つようになったのですって。

なぜ、地域貢献を考えるように? との質問に、
「郷土愛……というか危機感のほうが強いかもしれません。わたしは熊本市のお隣り、合志市(こうしし)に住んでいるんですが、小学校の頃『九州で2番目に住みよい地域』って教わったんです。だけど、最近になって調べてみたら、人口に対して医療や福祉が足りていないんじゃないかと思って。医療施設は熊本市に集中していて、わたしもそうでしたけど、こっちまで出てこないといけない。住んでいる町だから、どうにかしなきゃと。足元から見て考えています」

地域を盛り上げよう! とか、人が集まることを考える「まちづくり」や「地域活性」とは異なるアプローチで、地元のことを冷静に分析する瀬口さん。住み続けたい町だからこそ、生活を支える基盤について調べて行動しようとする姿勢、学ばせていただきます。

人と向き合うしごと

2年生の宮崎日向乃さんは、一時休学をしていた時期があると話してくれました。
「進路について悩んだ時期があります。人を相手にすることに自信が持てなくなってしまって。バイトをしながら、獣医を目指そうと受験をしました。だけど、ここ(看護学部)に入れたことも奇跡だなと気づいて、自分で納得して復学をして2年目です。だからみんなより年はとってます。人生いろいろっすね」

……いやいや、あなた若いですよ。

「看護師になるには『他人に対する愛』がないとできないなと思いました。わたし、進路で悩んでいるときは自分のことばっかり考えてたので。もちろん、目の前のひとは『愛』だけじゃ助けられない。だからこそ勉強して知識と経験を積むことが必要なんだなと、腑に落ちたというか」

「看護師の道は正解のない問い」と話してくれた宮崎さん。RUN伴には、実行委員として当日参加でお手伝いに入ったそうです。

「もらった資料で読んでいたものと、実際に当事者の方と一緒に歩いたRUN伴では実感度が全然違いました。すこし見くびっていましたね。これはすごい活動だぞって。この規模のイベントの準備を考えると、もうすこし事前に手伝っていればよかったな、とちょっと後悔もしましたね」

わたしが認知症を知ってほしい理由

そして、話はこのたびのRUN伴へ。

参加者の中で、唯一1年生の坂梨碧映さんが口を開きました。

「わたしは、まだできることがあったんじゃないかなと思います。認知症についての資料を入れた封筒をアーケードで道ゆくひとたちに配ったんですが、封筒は余っちゃったし、もらってくれないひともいた。本来は認知症のことを知ってほしくてやっているのに、伝わっていなかったんじゃないかな? と思ったら、悔しくて……」

「わたしが『Orenge Project』に入ったのは、おばあちゃんが認知症だったからです。お見舞いにも行っていたんですけど、わたしの知っているおばあちゃんと違いすぎて、怖くなってしまって、お見舞いに行けなくなっちゃったんです……。おばあちゃんが亡くなったあとになって『もっと何かできることがあったんじゃないか』と思って。
それで、認知症のことを周りの人がもっと知ることができたら、わたしみたいに後悔するひとも減るんじゃないかと思ったんです」

人通りの多いエリアを通る熊本市(中央区)のRUN伴は、横断幕を掲げながらパレードをしました。通行人の多いアーケードを通るときは、オレンジのTシャツに目を向けたひとが少なくないはず。
坂梨さんが訴えていたのは、実行委員として考えたひとつの作戦についてでした。
熊本のみかんジュース「ジューシー」を配りながら、認知症について知ってもらおうと関連資料を封筒に入れて通行人に渡していました。それが、坂梨さんのつぶやきの件。

だけどね、坂梨さん、わたしたちは見てましたよ。外国の方が「これは何?」と足を止めて、あなたが一生懸命英語で説明しようとしていたところを。
その場に居合わせたご夫婦がパレードのことを質問していたり、飛び入りでパレードに加わって最後まで参加してくれた方もいました。アーケードを歩く若い人たちの「あれ何?」「わたし知ってる。あれは認知症のことをやってるんだよ」という会話も聞きました。
すべての人をすぐに変えることはできないけれど、きっとあなたの行動は、大きな変化の一歩を担っているはず。

実行委員長の新留千晴さんも続きます。

「反省点はたくさんありますが、わたしたち学生は普段大人が頑張っている姿を見ることが少ないんです。身近な大人は家族と先生くらいで。看護学生とはいえ、認知症の方やそのご家族にも会う機会があまりなかったので、このRUN伴を、みんなで一緒につくりあげることができて、わたしとしては満足しています。
それに、Storiesのみなさんが取材に来てくれて本当に嬉しかったです! 『誰かが見てくれる、意見を聞いてくれる』って参加者みんなが思っていたからか、場が明るくなりました」

なんとわたしたちまで褒めてもらって、嬉し恥ずかし……。どこまでもまっすぐな彼女たちの瞳に、魅せられっぱなしでした。
最後は熊本のみかんジュース「ジューシー」をいただきながら、記念撮影。
本当におつかれさまでした! 次の学年に、いいカタチでバトンをつないでいってくださいね。

お世話になった熊本のみなさん、ありがとうございました!

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