朝、花市を一人で歩く。
「ガウツァ!(おはよう)」と、声をかけてくれるおじちゃん。
「ニーハオ」と返事をしながら、市場の中へ。
見たことのない花も並ぶローカルな花市は、不思議の国に迷い込んだような雰囲気。
ここは台湾、たしかに異国の地だ……。
けれどいつもと変わらない、濃ゆ〜い地域の魅力を体感してきました。
観光マップにもどこにもない、ここだけの台湾・見聞録をご覧あれ!

通訳=陳湘媮 Ayu

夜市……!

「台湾に来たら外せない!」とばかりに、友人になったばかりの劉(リュウ)さんに連れてきてもらったのは、そう。夜市!
細い通りに夜店がずらりと並ぶ、台北の人気スポット「三重三和夜市」だ。

「スイカのジュースを飲んで!」
「サツマイモの揚げたのも美味しいよ!」
「温かい素麺のスープも人気だよ」
と、おすすめの屋台料理を次々にごちそうしてくれる劉さん。
さすがジモティ! 地元のひとしか知らない料理をたっぷりと堪能できました(もうお腹には何も入らない……)。

このスポットはもちろん、観光マップにも載っていますが、
さすがにローカルおすすめの料理はなかなか食べれないでしょう?
(おまけに「三重區光田里社區照顧關懷據點〈三重区光田里コミュニティケアセンター〉」で手づくり帽子をプレゼントしてもらい、ご機嫌さんなナカハマとヤマモト。)
……極めつけは、これ。
「あれ? 劉さんじゃない?」

声をかけてきたのは、劉さんのしごと仲間! 夜市でたい焼きのお店を出していました。
彼女は、劉さんの働く「新北市三重社会福祉センター」のボランティアさんで、翌日のRUN伴にもバッチリ参加予定なんですって。前日にもバリバリ働いている彼女、なんて働き者なんだ!
「お近づきの印に、うちの店のたい焼きも食べてって〜」とチョコ味、ブルーベリー味、チーズ味のたい焼きをいただきました。ごちそうさまでした!

夜市を案内してくれた劉さんが持参したのは、日本と台湾の旗! このおもてなしの心意気がうれしい〜。

ハオチーざんまい!

「ハオチー(好吃)」とは「おいしい!」の意。ここ台湾でも、そんな美味しい思いをこれでもか! とくり返してきましたよ。……思い出しながらも、また食べたい。そんなとっておきの台湾料理たちをご紹介しましょう。
まずは、蚵仔煎(オアチェン)という小ぶりの牡蠣が入ったオムレツ。台湾の定番メニューで、劉さんたちも「大好き!」だって。屋台でも売ってました。もちっとした食感。上にかけられたソースはケチャップにあらず、ほんのりと甘辛い。薄味で一枚ぺろりといけちゃいました。ハオチー!

お次は、新北市の三重区で「いただきます!」。インタビューをした李珍子さんおすすめの店「力行魷魚羹」でいただきました。綜合(魷魚羹+魚酥)冬粉というメニューで、魚のすり身団子と粉末にしたイカのフライが載っかった麺。もっちりとサクサク食感がやみつきになり、気がついたらなくなっていた! あっさりな味付けと後から入れる手づくりの辛いタレとの相性も、ハオチー!!

最後は……大学いも!? お芋のまわりのホワホワは砂糖飴。なんとこれを冷たい水につけていただくんです。できたてほやほや、あっつあつの大学いもを冷たい水にくぐらせるとあら不思議。冷たいんだけどあったかい。ホワホワと頼りなかった砂糖菓子も急にパリッとして、食感が心地いい。楽しく、ハオチー!!! なデザートタイムとなりました◎
ごちそうさまでした!

旅を大満喫!

市場には、日本では見慣れないものがたくさん! 鶏が丸ごと「これでもか!」と吊られている……。お肉も魚もあますところなく美味しくいただくのが、台湾の食文化。ナカハマは、売り場に出ていた大きなピーマンにびっくり! ついついはしゃいじゃっても笑顔で応えてくれる、お店のおかあさんたちの器の大きさにも、おそれいりました……!

切符の買い方を教えてもらって、MRT(台北を中心に走る鉄道)にも乗りました! 車両内・駅構内は飲食禁止や禁煙が徹底されていて、清潔。
旅先で2、3駅だけ電車に乗るのも、けっこう楽しい。

足裏マッサージも体験! 「湯布院足體養生會館」というお店へ。日本風の店名に、期待も高まる。意外にも、足つぼでいてててて、なんてことはなく施術中は気持ちよくてついうとうと……。終わったあとは足が軽い〜◎ こりゃあまた受けたいぞ!

公園での対話

一同が訪れたのは、新北市の端に位置する「江翠礫間水岸公園」。雨が少ない12月は市民が続々とやってくる、憩いの場である。大きな樹には、雲雀(ひばり)と鈴虫を混ぜたような歌声の鳥がとまり、自慢の喉をふるわせている。
公園を歩き、気持ちがよかったのかTシャツ姿のStoriesメンバー・ナカハマ。この旅をすべて支えてくれた涂(トウ)さんに、同じ福祉に関わる者として聞きたいことがあった。
二人の会話は自然と、雑談からインタビューに……。

涂(トウ)さんのプロフィールは「エリア紹介」をチェック!

――なぜ、福祉の世界へ?

大学では国際貿易を専攻していました。生命保険や不動産関係の会社に勤めて、その後はアパレルショップのオーナーをしていました。
この世界に入ったきっかけは、精神科医の先生とのご縁です。先生は、ご自分で開業するためにアシスタントを募集していて、わたしがその役目を仰せつかったんです。それからずっと福祉の仕事をしています。気がついたら、もう24年も経ってる。

――24年前から、台湾の介護福祉の世界はどう変わった?

昔、台湾では「介護福祉」というものは貧しい人たちのためのケアというイメージが強かった。けれど状況が変わって、現在は7割が一般家庭のためのサービスになっています。
貧困に対するサービスであった頃は、かかる費用は行政が負担するので、訪ねるだけで喜んでもらえたの。けれど、今は目の前の人が中心。その人が望んでいるものを、わたしたちが勝手に決めるのではなく、ご本人やご家族から聞き出して、その人に合ったサービスを見つけ出す必要があります。
結局、貧しくてもそうでなくても、人に対するサービスであることは、昔から変わらないと思いますけどね。

――日本の福祉から学んだことは?

PDCAサイクル※が優れていると思います。サービスを事前に研究し、導入して改善する。実施した後も、また改善をしていく。これを惜しげもなくシェアするのが、素晴らしい。
2012年からわたしたちは、日本をはじめ、北欧、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、シンガポールの介護サービスの視察や勉強会をしてきました。どこも素晴らしい成功モデルを実践しています。
ただ、台湾の制度や文化、習慣、家族構成はどの国とも異なります。海外の事例を単純にコピーするのではなく、台湾の事情に合わせて実践する必要があると思っています。台湾ならではのニーズがどこにあるのか検討してから、慎重に取り入れるべきだと。

※PDCAサイクル……Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返し行うことによって、業務を継続的に改善するしくみのこと。

――台湾での認知症の方は、どんな見られ方をしていますか?

残念ながらマイナスのイメージです。台湾では、医療や福祉に従事する専門家でさえマイナスのイメージをもっているという問題もあります。
2017年に台湾で初めてRUN伴を開催しましたが、3年をかけて徐々に効果が出てきていると感じています。
医療福祉の専門家は、現場で当事者に症状や悩みを聞き出せないことが多いんです。聞きたくても、答えが出ないことも少なくありません。街なかを散歩するようなRUN伴のなかで、ご本人が抱える問題や家族の事情などが話しやすくなりました。普段の会話のように話せるからです。これはケアにとってもすごく効果的だと思います。

じっくりと二人で話をし、ナカハマの目の輝きが増したような……? お互いの考えを交換するだけでもチカラになることってあるんだなあ。
取材を通じて台湾のひとたちの「楽しくなけりゃ!」という気概、生きるパワーに目が覚める思いでした。取材にご協力いただいたみなさん、どうもありがとうございました!

取材メンバー(左から)

イラストレーション 五味健悟
写真 末吉理紗子
プロデュース・ディレクション 中浜崇之(NPO法人Ubdobe)
編集・執筆 山本梓

取材日:2019年11月29日〜12月1日
Special thanks!!! RUN伴台湾 実行委員会の皆様、台北市、新北市の方々、通訳・陳湘媮(アユ)さん

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