聖書を読みながら触れます。数珠にはひとつひとつ意味があるんです。

林 德媛さん

宝物:祈りのためのロザリオ

林 德媛さん

幼稚園の園長をしていました。25年、保育士としても含めたら55年になるかしら。子どもの頃から先生になりたかったの。高校の師範学校へ行きたかったのだけれど、家が貧しかったこともあって、進学はできませんでした。そこに、カトリック教会が主宰する幼稚園の募集があって、応募したのがはじまりです。当時は17歳くらい。
実家は嘉義(かぎ)県にあります。17時を過ぎたらクルマが一台も通らないような田舎町でね。いつも農作業の手伝いをしていました。学校からの帰りも、幼稚園に勤めるようになってからも。いろんなものを作っていましたよ。サトウキビ、落花生、アスパラガス、お米。当時は機械なんてないから、畑を耕すのに牛をひいていましたけど、植え付け作業は全部手でやっていたわね。……農作業の手伝いは、あんまり好きじゃなかったの。
それから2年間、高雄市で神学の専門学校でカトリックのことを学びました。幼稚園で働くために出合ったキリスト教でしたが、周りのシスターたちはみんなユーモアがあって、上品でした。わたしもシスターを目指して、進学したんです。けれど家族の反対もあって、台北の幼稚園に勤めることになりました。

21歳からずっと台北です。そこから55年間、幼稚園に関わってきました。台北は都会ですから、両親が共働きで、近所付き合いがあまりない子どもが多いです。わたしの実家のようなところは両親が農作業で忙しい反面、近所はみんな顔見知りでした。都会で働く親たちのために通常は16時で閉まる幼稚園も、18時まで子どもをみるプログラムをつくったりしました。
こんなこともありましたよ。「先生をお嫁さんにしたい!」なんて言う男の子がいて。わたしは「いいわよ。でもあなたが大人になるまで待つわね」と答えました。その子の家は時計屋で、時計を直しによく行くんです。彼が高校生になった頃、「結婚しましょうか?」と言ったら顔を真っ赤にして照れていました。そんな風に、子どもたちと今でも交流が続いているのは幸せなことですね。

このロザリオには聖書を読みながら触れます。数珠にはひとつひとつ意味があるんです。1つ目は、この国の平和と経済を。2つ目は家族の健康と安全を。3つ目には子どもたちの仕事の繁栄を。4つ目には夫婦の健康を。そして5つ目には自分の健康を祈ります。そうね、人生の祈りがつまっているわね。この小さな本は10代のときから持っています。聖書の一部を抜き出したもので、これを暗唱して、いつもお祈りをします。
あなたたちは若いんだから、自信を持ってね。たとえ、できないかもしれないと不安になっても、「できる!」という前向きな気持ちが必要です。さまざまな難関を乗り越えていってください。人生のストーリーは長いですから。

通訳=陳湘媮 Ayu

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