ワクワクするでしょう? 点が線になってつながっていくのがすごく楽しいんです。

宮内沙織さん

宝物:銚子のクラフトビール「銚子エール」

宮内沙織さん

今でこそ銚子と銚子の「ひと」が大好きで、まちが元気になるための仕事をしていますが、最初は内向的な銚子が好きじゃなかったんです。わざわざ市外の高校に入学したり、カナダに留学したり、南米を旅したり。昔はとにかく外に出たかった。
うちは両親が共働きで忙しく、父方の祖父母に育てられました。おじいちゃんおばあちゃんは農業をやってたんですけど、食が身近にあるというのに食をおろそかしているというか。味噌汁ぶっかけごはんで、昼ごはんおしまい! という食生活。そんな祖父母にすこしでも長生きしてほしいと、短大では栄養学の勉強をしました。
短大を卒業してすぐ、カナダ・中南米を放浪して、戻ってから栄養士として病院勤務もしたんですよ。たとえば大根はグラム単位でとらえ、そして何度で何分火を通す! という具合に叩き込まれました。それぞれの野菜には旬があって、泥付きで、誰が作った大根っていうのは全然関係ない世界。「これで本当に健康になれるのかな?」と漠然と思ってました。

2006年に、3年半勤めた栄養士を退職して、わたしの原点である祖父母の供養というか恩返しの気持ちで、四国の八十八ヶ所寺を巡るお遍路を歩きました。1か月で1400kmを歩き通しました。ここでも人との熱い出会いに恵まれましたね。歩ききった後、お遍路のお作法を教えてくれた尼さんに今後のことを相談したんです。わたしは旅が好きだから旅行会社にでも入ろうかなと思うって。「ええやん! 宮内さんはお遍路歩ききったんやから、お客さんを四国に連れてきて案内してあげればええんよ」と太鼓判を押してくれて。満を持して千葉に戻り(まだ銚子にはたどり着いてません)、出会った旅行会社の社長が、なんとお遍路経験者! ツアーもやっていて、陸路にこだわって、千葉から何日もかけてバスで行くんです。企画・営業・販売・添乗と旅行に関するほとんどの仕事を7年やりました。
おいしい魚を食べに銚子に行きたいと言うお客さんもいたので、その頃からたまにツアーを組んでいたんですが、まだわたし自身、「銚子には特にいいところないよ」という考えでした。それは、もしかしたらわたし自身が銚子のいいところを見ようとしていなかったのかもしれません。
銚子へは、2014年に戻ってきました。期間限定の国の委託事業が商品開発と観光ツアー開発を両軸にした求人をしていてね、栄養士と旅行会社経験のあるわたしにピッタリでしょう? このNPOに入ってからは、銚子のありとあらゆる人に会いに行きました。そりゃあ大変でしたよ。2か月で6キロ痩せましたもん……。だけど、動いてる人には動く人しか寄ってこない。ここでの出会いがなければ、今のわたしはいません。

波乱万丈? あはは、もしそうなら愉快な波乱万丈です。ここからさらに激動なんですよ。2018年の5月にNPOを卒業して、8月には会社を発足させていました。『C’s marina Kitchen & Cafe』をこの場所でスタートすることができたのも、まちの人たちのおかげです。全国各地からの大学生たち先生たちはじめ、地元のお客さん、屏風ヶ浦を目指して訪れる観光客。いろいろな人たちが交流するコミュニティ・プレイス的な場所になっています。日曜日にはキンメ漁がお休みだもんだから、外川の漁師さんたちも「来たどー!」ってやってくる。キッズスペースは、地域のママたちが使わなくなった幼児用の床材やおもちゃを持ち寄ってくれて、気づいたらできていたという感じです。アクセサリーを作っているクリエイターが、一度店に置かせてって持ってきたら、「わたしもわたしも!」って今では物販スペースが大賑わい。

それと、銚子エール。今、事業を一緒にやっている相方が出産を機に銚子に戻ってきて、海の恵み・畑の恵み、気候が温暖で自然豊かななんでも揃う銚子だからこそのオリジナルビールをつくろう! とはじまりました。クラフトビールのいいところは、みんなで一緒に造れるところ。農家さんにビールの麦とホップを作って! とお願いすると「楽しそう! やってみる」と実践してくれます。銚子といえばお醤油なので、酵母を醤油の菌からつくれないかな? なんていう夢を語れば「醤油もビールも同じ発酵食品だし、やってみたいですね!」と地元のお醤油屋さん。ワクワクするでしょう? 点が線になってつながっていくのがすごく楽しいんです。

RUN伴に関しても、同じこと。これは、福祉のイベントじゃないんです。地域のみんなを横つなぎするイベントだと感じたんです。福祉業界の人だけが盛り上がるのではなく、全然関係ない人が中にいたほうがいいと思って、実行委員長を引き受けました。銚子には、毎年「サンママラソン」っていう大きなイベントがあるんですよ。押っぺし車のばあちゃん、子どもたち、ありとあらゆる人が沿道に立っていて、ゴールまで人が途切れないんです。RUN伴も、サンママラソンみたいににぎやかにしたいですね。マラソンに興味がある人もそうでない人も、みんなで応援し合うイベントに。きっとそうなっていくと信じています。何年後かに来たらビックリすると思いますよ。

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