日の光をじっと観ながら山の陰影や、雲の出るタイミングをひたすら待ち続ける真剣勝負。

塚口 実さん

宝物:モノクロプリントの山岳写真

塚口 実さん

生まれも育ちも銚子、71歳になります。今までは私にとって日常の風景である海には興味がなく、銚子にはない高山に憧れました。もうね、好きで好きで。市役所に長く勤めていたんですが、休暇をとって四季を通して山の撮影にずいぶん行きました。
我が家のリビングに飾ってあるモノクロの全倍プリント(600 × 900 ミリ)のエベレストの写真は、私の宝物。モノクロフィルムにこだわっています。白黒写真は「どんな色かな?」と、色を想像させるでしょう。
冬の朝、蒼空の中、白銀に輝くヒマラヤの山々、世界最高峰のエベレストを撮影しました。撮影地のカラパタール(標高5500メートル)は富士山よりも高く、60歳で登りました。ネパール人のキッチンボーイ兼ガイドの青年が高山病になり、私の用意した酸素ボンベがなくなってしまったなんてことも。私はヒマラヤの高所に順応するために、日本の山小屋で働いていました。

市役所を早期退職し、長野県と岐阜県にまたがる北アルプスの槍ヶ岳の山小屋でアルバイトをしました。アルバイト代は安価だし、高齢の母の介護はあるし、妻には大変な迷惑をかけましたね。私は「巷の奇人」で通っていますから、妻も「言い出したら聞かない人なので、あきらめています」と言われてます。山小屋やヒマラヤ行きを許してくれた妻には、今でも感謝しています。

今は、デジカメでいくらでも撮れますが、フィルムカメラは撮影枚数が限られているでしょう? ですから、山と対峙し、日の光をじっと観ながら山の陰影や、雲の出るタイミングをひたすら待ち続ける真剣勝負。「ここぞ!」とシャッターを押す、この瞬間が私にとって至福のときです。デジカメは撮った写真をその場で確認できますが、フィルムカメラはすべて想像、長年の勘が必要であり、達成感があります。
現像は、プロの写真家や写真の後輩に指導をしてもらい、小さい作品は自分で行っていました。現像液の中から、だんだんと浮かんでくる写真を見ながら、重いカメラや三脚を背負い山に登り、レリーズでシャッターを押したり……一連のできごとを思い出しますね。
先日、銚子の屏風ヶ浦をバックにして目の前をサーファーが横切ったんで、たまらずシャッターを押しました。これからは、銚子の素晴らしい風景をテーマにデジカメで撮影するのもいいかなと思っています。

RUN伴との出合いですか? 元々市役所でも高齢者福祉課に長く在籍していたことがあって、福祉関係の顔なじみも多いんです。今回も実行委員の方に声をかけてもらって参加しました。イベントは行政が主導すると、どうしても固くなってしまいます。民間のみなさんが一生懸命に動くことで、肩書きとか世代とか身内とかいう壁を飛び越えて付き合える「オール銚子」が実現したと感じました。イベントに参加している子どもたちが楽しそうにしていたので、写真も撮らせてもらいました。このときは、デジカメ(コンパクトカメラ)が出番ですね。

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